来 歴


仮面


キツネのように
しらじらしい顔つきを
振り向きざまに引き剥いて
そっくり押しつけて行ったやつがいる
はらりとかき上げた
ひたい髪のすき間から
新月に似た
優しい目もとが笑ったのか
裂けたまなじりから
血が噴きこぼれたのか
見きわめるいとますら
私にはもらえなかったのだ
風に逆らって
首を振って見せたところで
それが誰に通じる
いったい何の合図になる
キツネの仮面からのぞく
ニセの風景のなんとまぶしいことよ

いなかくさいにぎやかさで
私の風景を塗りつぶしたやつ
キツネの仮面とひきかえに
私の名前をはぎとったやつ
背よりも高い
すすきの群落に押し出されて
いっかなおまえを追い越せない
目くるめく白日を見据えて
ニセの風景のはるかかなたへ
狂気の発作を追いつめるのだ
おそらくはその
未来とか名前のつけられている
虹色の崖っぷちのあたりまで

押しつけられた仮面の下
赤くにじんだ視野に
ぼんやりせり上がってくるもの
いびつな間隔で迫ってくるもの
私の遠近法では描ききれない
さびしい天のかくれ家で
もうひとつのてのひらが
いやにゆっくりとかみそりを研いでいる

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